死ねない

なぜなのか。覚悟はしたし、職場から自分の痕跡を全て消し去ったのに死ねなかった。

布団に包丁を抱え込んで3日経つのにりまだ生きている。まだ生きているのだよ。

上司や同僚から連絡が続き音信不通で貫き通すも、いよいよ実家にまで電話にかかってきたから、熱が出て…とか細い声で言い訳して今に至る。

刃先が一向にこちらを差してくれそうにないので、外に出る。改札口をパッと。駅のホームで次々と来る電車をぼんやり眺めながら気付けば辺りも暗くなり。改札口をパッと。夜道は鋭利な光を僕のギリギリをすれ違う。けれど、僅かな距離を縮めれなくて。

白線の内側をお通りください。
はい、わかりました。

良い子はルールを遵守するのだ。

帰路についてみて。待ちぼうけの尖ったあいつが布団を暖めてくれてるぞ。ありがたい、ありがたい。

今日も平穏な一日でしたとさ。